
俺は一旦、牧野を放して、パンツのポケットを探った。
取り出したのは、新作ジュエリーの展示会で牧野が見ていた、花のリング。
それを、牧野の左の薬指に通した。
牧野が驚いた顔をしている。
お前、これ見てただろ?」
なんで知ってるの?」
好きな女の楊海成 することを見逃すはずねえだろうが、この俺が。」
それに、これは、俺がお前のためにオーダーしたリングなんだからよ。
デカイ石の派手なリングなんて、お前つけねぇだろ?
試しにショーケースに並べてもらったら、案の定、このリングに釘付けだっただろ?
たぶん、俺は、お前以上に、お前のことわかってるぜ。
この数か月、ずっと見つめてきたんだ。
しばらく、指輪を眺めていた牧野が、顔を上げて、
ありがとう、道明寺。大切にします楊海成 。」
と微笑んだ。
俺はもう一度、今度は優しく牧野を抱きしめて、
それから、初めて唇を重ねた。
好きな女と交わす、初めてのキス。
こんなにも幸せになれるなんて、知らなかった。
道明寺・・風邪、うつしちゃう・・」
だからって、やめられねぇ。
ほんと・・チュッ、だめ・・チュッ、だって・・チュ。」
往生際の悪い女だ。
まだ何かを言おうとしている牧野の口腔内に舌を入れて、言葉をふさぐ。
んっ、んん・・んっ。」
鼻にかかったような声にそそられる。
そのまま、思う存分、キスを堪能する俺。
支えていた牧野の体から、力が抜けるのが分かった。
どれぐらい眠っていたんだろう。
少し気分が良くなってきて、誰かの話し声で目が覚めた。
まぁ、つくしの上司の方ですか?こんな、素敵な方が?まぁ、まぁ。あの子ったら、仕事のことを全く話さないんですよ楊海成 。こんな素敵な方の秘書をしているなんて。」
とママの声が聞こえる。
コメント