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花沢類は司と同じで女性に対してさほど興味を示さない男だが、つくしに会ったその態度が余りにも好意的だったため、司はイライラしていた。

「会えてよかったよ。司にもつくしさんにも。じゃあ悪いけど俺、急いでるか皮膚分析ら。これからパリ行の便に乗らなきゃならないんだ」
「ああ、帰れ、帰れ。さっさと帰れ」

普段はフランス、パリに住む花沢類は親しげにつくしの肩をポンと叩くと執務室から出て行った。

花沢類との関係は、ひと言でいうならライバルでありよき友人。
そんな二人の間で交わされる会話は意味を成さないものが多いが、それは昔からそうだったらしい。
そして花沢類が帰ったあとで、司はつくしに言ったのは、
これ以上おまえの崇拝者を増やす必要はない。のひと言。
そんな口ぶりだが二人の男性の仲は良好のようだ。

つくしの崇拝者。

総二郎、あきら??そして撫平皺紋司の父親。
母親の楓に次いで会わせた父親は
「牧野さん。ようこそ道明寺へ。司と出会ったことは運が悪かったと思って諦めてくれないか」

そんなことを平気で言う男性はどこから見ても完璧な紳士だ。
司の体を成す幸運の染色体の半分はこの紳士から来たかと思えば充分納得出来る。何しろその態度もそうだが、鋭い瞳は父親にとてもよく似ていた。背格好はまさにそっくりで、もし後ろ姿を見ただけで判断するとすれば、髪の毛に混じるグレーだろう。

もうこれ以上男の崇拝者は要らない。

司の父親は運が悪かった出会いを諦めてくれと言ったが、孫の誕生は幸運だと喜んでいた。
いい年した活力精油男がいつまでも一人でいるのは好ましくないと考えていたのは、どうやら母親と同じ意見だったようだ。




「それより、その写真ここに飾るの止めてよ??恥ずかしいじゃない」
「何が恥ずかしいんだよ?失礼な女だな」
「失礼なのは司でしょ?」
「何が失礼なんだよ」